箱庭的世界 >> 京都単独煩悩紀行 >> 悩ましき淡紅葉・第2日目-3

 ●蓮華寺

(蓮華寺の歴史は2003年秋の項にあります)

2年前の訪問時は紅葉受難の年で色付きが中途半端だったので、リベンジのつもりで今回来てみることにしたのである。

小さな山門をくぐると前回とは比べものにならない鮮やかな色が目に飛び込んできた。鮮やかとは言え豪快な真っ赤ではなくちょっと淡めの柔らかい色合いで、葉が小さいためか(?)繊細さも感じられる。やっと蓮華寺の実力の一端を目の当たりにすることができた。

 

しかし時期的には見頃ピーク前のかんじ。この参道よりも進行が遅い庭園の方はまだ色付き始めたばかりに違いないが、念のため拝観することにしよう、と思っていると受付から僧侶の方が人々に注意を促す声が聞こえてきた。「本堂側からの庭園撮影は禁止ですので〜。座敷からだけにして下さいね〜」げっ、それは初耳だ。知らぬ事とは言え前回は平気で撮影してました、スミマセン…。

一方、別の関係者の方はひどくご立腹の様子。マスコミの取材クルーが何やら約束違反の行為をしたらしい。それでなくても混みあう時にマナー違反は神経を苛立たせるだろうと想像がつく。ちょっと気まずい気配を背中に感じつつ逃げるように堂内へ入ってみると…

座敷は宝泉院どころでない大人気白熱超フィーバー状態で足の踏み場もない。うわぁぁなんだこの混雑は!誰か雑誌やテレビで宣伝したのか?
仕方なく縁側下に降りて本堂へ向かう渡り廊下の上で一息ついていると、ご住職らしき方の解説の声が響いてきた。宝泉院でのお説教よりやや厳しい口調で。

「お寺の庭園はお釈迦様が修行した場を再現したものなのです。中へ入って楽しむガーデニングとは違うのです。仏壇と同じく座して向かうものなのです。拝殿の奥に座ったと想像して拝むものなのです。……」

できれば観光客の習性を少しだけでも大目に見て頂けないものだろうか、と思ってしまうことは否めない。でも身の引き締まるお話を聴けて運が良かった。このお寺が「人々に拝観してもらう」ということについて真摯に考えてらっしゃるということは理解できた気がする。

しかしそもそも、何故お寺の境内が華やかな花や紅葉で飾られるのか不思議だ。本堂や書院前の庭園が仏の世界を模して美しく造られるのは理解できるとしても…。もしかして境内の花や紅葉も仏様がたの徳を示す荘厳(仏堂などに施す美しい飾り付け)の一部なのかもしれない、と無知なりにふと思ったがどうだろう? 機会があったら僧侶の方に伺ってみようっと。

ご住職のお話の後は各自自由行動へ。渡り廊下の先の本堂を拝観してから座敷へ戻り、庭園の写真を撮ろうとしたがあまりの混雑に閉口してしまった。相変わらず、額縁庭園だろうが何だろうがとにかく前を陣取って見たがる人も多いようだ。いや、この場合は混みすぎていて前を開けておけないだけなのだろうけど。


▲境内の鳥居
▲境内のイチョウ
▲参道
←できれば前列で急に立ち上がるのも控えて頂けないものでしょうか…

座敷は前回独り占めで満喫したので(ここ参照)写真はこの程度で諦めて次に行くことにした。ちょうど門前にタクシーが来たので、すかさず飛び乗り曼殊院へ。



 ●曼殊院

伝教大師最澄により比叡山に創建された一坊が起源。初代門主とされる是算国師の時(天暦年間)に比叡山西塔北渓に移り「東尾坊」と称した。これ以後明治初期までの門主は北野天満宮の別当(管理職)も兼ねていた。8代目門主・忠尋大僧正の時に寺号を曼殊院と改め北山に別院を建立、26代・慈運法親王以降は門跡寺院となり、明暦2年(1656)良尚法親王の時に現在地に移る。
桂離宮の様式をくむ庭園と江戸初期の代表的書院建築で知られ、国宝の黄不動像古今和歌集のほか狩野派襖絵など寺宝が多い。庭園は紅葉と霧島ツツジの名所。

高い石段の上に皇室ゆかりの寺院らしい品格漂う勅使門があり、その両側、斜面いっぱいに色付いた紅葉が見頃になっていた。なかなか見応えあるとは言え、内部を拝観しないでここだけ撮影するカメラマンも居るというのはもったいない話だ。自分としては内部の記憶が薄れかけているほど久々の拝観なので、当然ワクワクテカテカで堂内へ向かう。

勅使門ではなく北側の通用門から入り、虎や孔雀の襖絵が見られる大玄関、本尊が安置される大書院へと進む。本尊が安置されていながらも仏堂ではなく何故か大書院と称されているところがミソらしい。
大書院は杉戸のひょうたん型引き手金具や七宝の富士山型釘隠、小書院は欄間の透かし彫りや寄せ木造りの曼殊院棚など、細部のつくりが特徴的で洗練されている。今回はそのへんもちゃんとじっくり見ようと思ってはいたものの、ついつい大書院・小書院から見える庭園の紅葉に気をとられてしまう。毎度のことだ…。堂内の撮影もある程度OKなので撮らせて頂けば良かった。

小堀遠州好みと言われる枯山水庭園は白砂と松の緑が美しく優雅。小書院は水面をさかのぼる屋形舟に見立てられているそうだ。紅葉は思いのほかかなり見頃になっていた。庭園内を歩くことは出来ないので大混雑の堂内からの撮影はちょっと難しいが、それでも満足できた。以前、今は亡き母とのんびり紅葉を見に来た時のことを思い出す。

この庭は霧島ツツジの名所でもある。霧島ツツジは普通のツツジ(平戸ツツジ)より少し早くビックリするほど真っ赤な花を付ける。機会があったらぜひ一度は見てみないと。

帰り際に、特別公開中の「上之台所」をちょっと覗いて行った。特別な客のための台所だそうで、お寺の解説には「都の文化を今に伝える唯一の遺構」とあるがちょっとわかりにくい。以前見た時の記憶より妙に白くピカピカしているが、修復したてなのだろうか。

そういえば以前、曼殊院は幽霊の掛け軸があることでちょっと知られていた。自分も二度ほど目にしたことがあったが、噂によると今は元々所有していた寺へ返却されているらしい。何かあったのだろうか…。変に勘ぐってしまうほどかなり怖い絵だったのだが…。

曼殊院を出るとすぐ隣が弁天堂。食事処もあるし紅葉も綺麗でちょっとほっとできる。母と食べた弁天茶屋の門跡そばが結構旨かったのを思い出すが今は食ってる時間無いので我慢、ここからはひたすら徒歩で白川通りのバス停まで下る。


▲勅使門横の紅葉
▲枯山水庭園(手前が亀島)
▲手前が亀島、左は小書院



途中にある紅葉名所の鷺森神社へ寄ってみたが、時季が早すぎたのか何やら色付きが良くない。雰囲気がいいと言われている参道も彩度の低〜い色の葉ばかりで残念な結果だった。

本日の拝観はどうも淡い色合いの紅葉が多かった気がするので、真紅の紅葉を求めて西賀茂の神光院へ行ってみることにした。急いで行けば薄暗くなる前に撮影できるが直行バスが無い。どうやって行くか考える時間ももどかしく、白川通りから適当にバスに乗り途中でタクシーに乗り継いで向かった。

〈つづく〉


▲残念だった鷺森神社

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