箱庭的世界 >> 京都単独煩悩紀行 >> 極寒の春雨に煙る桜・第2日目-3


(前ページの続き)妙蓮寺を出て本法寺へ向かう。
堀川通を渡ったところに菓子処の田丸弥がある。ここのお菓子が真如堂の涅槃会で配られると聞いていたので探してみると、あまり売れ筋ではないのか地味なところに置いてあった。しかし説明書きを読むと確かにあの涅槃会のお菓子「花供曽はなくそ)」だ。さっそく購入してみた。味は黒糖のきいた堅めのひなあられ、といったかんじ。
田丸弥から少し歩くと本法寺への地味な入口に着く。堀川通沿いには山門が無いのでややわかりにくい。


 ●本法寺

永享8年(1436)日親上人により創建された日蓮宗本山。将軍・足利義教に迫害を受けるが再建され、変遷を経て秀吉の聚楽第造営の際に寄進を受け現在の地に移転した。豪華な伽藍を誇っていたが天明の大火でほとんどを焼失、のちに再建された。
焼失を免れた
長谷川等伯筆「仏涅槃図」は春秋に特別公開される。本阿弥光悦作の三巴の庭も知られている。

先程の妙蓮寺以降のコースは特に有名な桜名所というわけではない。しかし街なかの寺院としてそれぞれに趣があり、土曜でも空いていること請け合いで桜も独占して楽しめるはず。

本法寺は渋い雰囲気の堂塔が狭い境内に並んでいる。びっちりと隣のビルが接近していて気の毒なほどだ。妙蓮寺もそうだが、この借景のビル群がお寺の「別世界感」をうち消してしまっているかもしれない。

本堂そばには本阿弥光悦翁手植えの松があった。光悦の曾祖父が将軍・足利義教に仕えていた際に怒りにふれて投獄され、そこで獄舎を共にした日親上人に帰依し、以来本法寺は本阿弥家菩提寺となったのだという。日親上人もまた「立正治国論」が将軍・義教の逆鱗にふれ投獄されていたわけで。義教はさらに寺を焼き払い上人の頭に焼き鍋をかぶせるという拷問をも行ったそうである。絶句・・・

次に書院前の光悦作「三巴の庭」と春期特別公開中の長谷川等伯筆「仏涅槃図」を見に行ったのだが、その時、塔の向こうに見覚えのあるかたを発見。後日確認してみるとやはり堤タクシーさんに間違いなかった。昨秋にも偶然お会いしたばかりなのに、これまたなんという不思議なご縁でありましょうか・・・

で、おずおずと一人で堂内拝観に向かい、まず宝物館へ。2階が吹き抜けになっており、壁にかけられた涅槃図を上からも見下ろすことができる仕組み。天地10m近くあるというあまりのでかさと興味深い描き込みに圧倒された。釈迦の入滅を嘆く人々と動物たち。そこに猫とコリー犬も居るというのが特徴だそうだ。他に光悦作の陶器や面なども展示されていた。

書院を囲むような庭園「三巴の庭」は、石組みと地面と池の形が独特で他には無い形式の枯山水。半円二個を組み合わせた形の石と蓮池は「日蓮」を表すそうである。視覚的に不思議すぎて今ひとつよくわかりにくい庭かも。

桜に囲まれた多宝塔前を通り、天明の大火後の建築にしては非常に古めかしさがある特徴的な仁王門から小川通へ出た。


▲本堂と多宝塔
▲多宝塔
▲三巴の庭
▲仁王門


●小川通から寺之内通

小川通には風情ある造りの裏千家「今日庵」と立派な門構えの表千家「不審菴」があり、品のある雰囲気が漂っていた。
寺之内通と交差する角には百々橋の礎石が残されていた。ここにかつて流れていた小川(こかわ)を挟んで、応仁の乱の際に東軍と西軍が激しい戦いを繰り広げたという歴史がある。川は昭和なかばに埋められ、架かっていた百々橋は洛西竹林公園に移築復元された。橋の礎石のうち2つは室町小学校とこの寺之内小川に保存されることになったのだそうである。石一つにも深く重い歴史が刻み込まれているのだ。
百々橋…「どどばし」と読む。どど??その語呂が妙にツボにはまってしまい、気になって仕方がないので今回見に来たのである。礎石は雨のあとがヨダレのようでややがっかりだが、多分こういうもので正解なのだろう。(なんだそりゃ)
そのすぐ西隣には人形の寺として知られる宝鏡寺がある。境内の庭園が気になるが春の人形展は前日(4月3日)に終了したばかりで拝観不可、門の中にある丸顔の人形塚だけを見ることができた。

寺之内通を東へ少し進むと妙顕寺とその塔頭が見えてくる。


▲今日庵
▲百々橋の礎石


 ●妙顕寺
 
永仁2年(1294)日蓮聖人の法孫・日像上人により、京都における最初の日蓮宗道場として開かれた。のちに妙覚寺・立本寺・妙蓮寺・本隆寺など法華宗各寺が分立する。旧仏教側により受けた法難や秀吉の政策にともなう移転など変遷を経て現在の地に落ち着いた。堂宇は天明の大火後の再建。
本堂前の灯籠は妙顕寺型灯籠。塔頭・泉妙院は
尾形光琳菩提所である。

境内横の通りに塔頭が並んでいて満開の桜がきれいに咲いていた。噂によるとこのあたりは紅葉も多いはず。塔頭を眺めながら妙顕寺本堂裏側から入ると、境内は意外に広く開放的でここにも桜が多い。しかし非常に地味なお寺なので花見客はほとんど無しでかなり淋しげである。ボコボコに欠けた常燈明なども微妙な無気味さをかもし出していたりして。
この寺には宿坊があり、確か堂内拝観もできるはずだと思うが、あまりの静けさに庫裏を訪問する勇気が出ず素通り…。やはり尋ねてみるべきだった。

とにかく全く観光寺院めいたところがないが、ここの桜は意外に花付きが良く人知れずレベルが高かったかもしれない。ぜひ健闘をたたえておきたいと思います。

次は法堂と方丈と浴室が春期特別公開中の相国寺へ向かった。

(つづく)


▲建物名不明(左端が常燈明)
▲ひっそりと咲く境内の桜

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