箱庭的世界 >> 京都単独煩悩紀行 >> 冷夏にも秋の暑さにも負けず・第2日目-3

 ●円通寺

江戸時代初期、後水尾天皇により比叡山が最も雄大に見えるというこの地に造営された幡枝離宮がもとである。のちに修学院離宮が完成したため、幡枝離宮は霊元天皇の乳母にあたる瑞雲文英尼に譲られて延宝6年(1678)寺に改められ、以来皇室の祈願所となった。現在残るのは離宮の一部だが、比叡山を借景とし40個あまりの石を配した枯山水庭園はかつての庭をそのままに伝えていると言われる。

庭園は以前は撮影禁止だったが、周辺地域の開発が許可されて高層建造物が建つことになり、遙か比叡山を望むこの景観は見納めになるだろう…ということで2002年から写真撮影が許可されることになった。
ご住職はニュース番組にも出演なさってこの現状を語ってらしたが、今のところ法律上は景観を守る手だては無いらしい。これはマジですか? 景観を守ろうとしない一方で客寄せに躍起になったり、観光客の集中化で一部の寺社境内が荒れる危機感もあるというのに… 全く理解できませぬ。

田畑の広がるのどかな小高い丘にぽつぽつと民家が並ぶ、その中に立つお寺である。
石畳の先に思ったより小さく楚々とした雰囲気の山門があった。お寺自体も小さいので玄関を上がって少し行くとすぐに書院があり、覗き込むと枯山水庭園が大きく開けている…と思った瞬間、座敷一面を埋めつくして前方を凝視する拝観者の数にびっくり!
皆さんやはり景観保護問題に関心を持たれていらしたのだろう。こんなに大勢いるとは予想もしてなかったので異様な雰囲気と緊張感にビビってしまった。しかも流れてくる説明の声はてっきりテープだと思っていたら、座敷中央後方でご住職自らが説明して下さっていたのだ。うぉぉ、だから緊張感が漂っているのか…


▲書院入り口から見た庭園

▲庭園(左半分)
ひ、ひ、比叡山がない!

そうして大変わかりやすいお話を伺ったあと、庭の写真を撮らせて頂いた。庭の左右にポイント的にあるカエデは種類が違うので色付きに時間差があるそうだ。この日も左の木は赤くなっていたが右側はまだ青葉だった。寺のパンフレットの写真でも確かに左側が先に色付いているのがわかる。

柱を額縁に見立てて見るのだが、パノラマのように横に広がる庭は写真一枚に収まりきらない。実は借景の比叡山にそれほど思い入れは無かったのだが(^^;) 実際に対峙してみると居心地が良いので長居してしまった。多くの種類の樹を混ぜてあるという「まぜ垣」、書院の柱と一体化して見えるようなまっすぐな杉木立、その向こうの比叡山との間には断崖絶壁でもあるかのような奥行きが感じられる。壁に貼られたシミュレーション図ではこの間に高層建築物が建つと仮定されているが、見るからにイヤ〜なかんじだ。


長居したあと寺を出て、円通寺道バス停までしばらく歩いた。確かに造成地にしたくなるような豊かな空き地(?)がひたすらのどかに続いている。このあたりに、平安時代に大内裏や寺院の瓦を焼いていたという栗栖野瓦窯(くるすのがよう)跡があるらしい。バスは本数が少ないので事前のダイヤチェックは必須です。



 ●蓮華寺

もとは七条塩小路あたりにあった古寺で、寛文2年(1662)加賀前田家の家臣・今枝民部近義が祖父・今枝重直の遺志を継ぎ、かつ菩提を弔うためこの地に移して再興した。石川丈山狩野探幽木下順庵隠元禅師らの文化人が再興に協力したと言われる。鶴石・亀石などが配された池泉回遊式庭園は紅葉の美しさで知られる名庭で、丈山作とも小堀遠州作とも言われている。本堂・庭園・鐘楼堂などは創建当時のままの姿で残されている。

蓮華寺のすぐ前に上橋バス停があるが円通寺からの直行バスは無い。一番近い岩倉三宅町バス停で降りて10数分歩くことにした。小さな入り口を見過ごさないようにしながら交通量の多い国道(若狭街道)沿いにしばらく歩く。
山門に着くと、紅葉名所として知名度が上がってきただけあって結構多くのかたが写真を撮っていた。入ってみると参道は予想以上にほとんど黄色一色! あ、イチョウか(^^;) しかしカエデの色進行はやはり遅れているようだ。

書院前庭園も色づき進行はまだまだだが、黄色とオレンジで彩られているだけでも充分に美しかった。池泉回遊式ながら一人だけのためにあるかのように小さな庭園で、水と石組みと形のいい木々の調和が素晴らしい。緑は深いけれど暗い印象は無く優美で、新緑の頃もまた美しいに違いない。でもやっぱり紅葉最盛期に来てみたかった…。

なかなか座敷は人の出入りが多くて写真を撮りにくいので、渡り廊下(?)を歩いて庭園横の本堂まで行ってみた。こちらから見るとさらに深山のおもむきがあって、南禅院庭園などが思い出されるかんじだ。本堂前の灯籠は蓮華寺型と言われる珍しいもので、笠がやたらに尖っている。
再度座敷に戻ってしばらく時間を過ごすうちに日暮れ近くになり、人の姿も消えて行ってついに残るは自分のみ!
額縁庭園を飽きるほど独り占めして堪能させて頂きました。

帰る前に茶席でお抹茶を頂いたのだが、その席の前にも庭があった。紅葉は無いけれど小川のせせらぎと野趣あふれる背後の山の岩が個性的な庭だが、ここはお抹茶を頂かないと見られないのかも。

蓮華寺を出るとまだ明るいものの日が落ちかかっていたので、急いですぐ隣の崇道神社へ向かった。密かに来てみたかった妖しげなスポットである。 〈つづく〉


▲黄色い参道

▲書院前の庭園

▲池の横から見る書院

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