箱庭的世界 >> 京都単独煩悩紀行 >> 史上最強の錦秋美・第3日目-2

 ●光悦寺

元和元年(1615)徳川家康から拝領した土地に、本阿弥光悦が一族縁者や工芸職人とともに移り住み、いわば「芸術村」を作り上げたのがおこり。光悦の没後に本堂が建てられ寺に改められた。光悦木像(かなり怖い)が安置される三巴亭、光悦終焉の大廬庵、了寂軒、徳友庵など七つの茶室が散在している。大廬庵を囲む独特な形の光悦垣が有名。

光悦と言えば、2003年NHK大河「武蔵」で津川雅彦氏が演じられていたあのスーパー翁である。家業の刀剣鑑定などの他に、書道、陶芸、彫刻、作庭など多芸に秀でていたとか。(菩提寺の本法寺には光悦作の庭園があり、特別公開時には作品のいくつかも目にすることができます。)ドラマではお通さんと城太郎がしばらく身を寄せてお手伝いに勤しんでいた、あのあたりがやはりこの光悦寺なのだろうか?

昔、初秋に訪れた時は静まりかえり蚊だけが飛んでいた。奥行きが広くやや荒れ果てたような境内にぽつりぽつりと建つ茶室が不気味なほど。寺というより寂れた山荘跡のような気がしてならなかった。諸事に惑わされず芸術活動に専念するための場なのか?
今回は狭い参道が目に痛いほど真っ赤っかな紅葉のトンネルになっており満員電車並みの大混雑で、予想していたとはいえびっくり。しかしめげずに中へ入って行くと、参道以外の紅葉はわりと落ち着いた雰囲気になっていた。

以前は超有名な光悦垣を見落とすという失態を演じたので、今回はきっちり見ておいた。柔らかい弧を描いていて上品な形。ちなみに竹材店で「光悦垣」とオーダーすれば、この斜め組子が美しい透かし垣を作って貰えるはずである。(なんのこっちゃ)


▲光悦垣(臥牛垣)
▲燃えるような参道


 ●源光庵

貞和2年(1346)大徳寺二世・徹翁国師の隠居所が元であり、のちに加賀国大乗寺の卍山道白禅師が曹洞宗寺院として再興した。
本堂には禅と円通を表した丸窓「悟りの窓」と、生老病死・四苦八苦を表した角窓「迷いの窓」がある。本堂廊下の血天井は、伏見城で徳川方の鳥居元忠らが自刃した時の床板を移築したもの。

源光庵は光悦寺のすぐ隣なのでこちらも大勢の拝観者が詰めかけていた。
ススキが茂る特徴的な山門をくぐると本堂があり、堂内は田舎の家屋のように暖かみのある雰囲気。すぐに悟りの窓迷いの窓が目に入ってくるので速攻でそちらへ向かう。窓に切り取られた庭園の紅葉が鮮やかでとても印象的な不思議な空間だ。混雑していてもそれなりに満喫できるが、写真を撮るにはマナー厳守で辛抱強く順番待ちしましょう。


▲丸窓(悟りの窓)/角窓(迷いの窓)

その窓の右奥の部屋からも庭園が眺められ、お堂の一番左手(西)にもちょっとした庭(?)があって、どちらの紅葉も見応えがある。特に右(東)奥の庭園は目に焼き付くような色付きが感動的。あちらへ座りこちらへ座り、と煩悩しつつ長時間過ごしてしまった。
紅葉シーズン以外は人出も少なく静かなはず。そんな時期にはまた今とは全く違う心地良さと、より深い禅寺の趣が感じられるに違いない。と思いつつ寺をあとにした。

そして次は源光庵お隣の常照寺だが、ここでその次の大徳寺塔頭へ向かわねばならない時刻が迫っていた。さんざん行程を練り直し優先順位を考えてみたのだが、やはり常照寺は拝観せずに無料エリアのみ見せて頂くことにした(T-T) 吉野太夫さんごめんなさい。



▲丸窓と角窓

▲本堂東奥の庭園


●常照寺

多芸に秀でた名姑として有名な吉野太夫ゆかりの寺で、赤門(吉野門)は太夫の寄進によるものだとか。NHK大河での小泉今日子さん演じる太夫は、武蔵の眼前でいきなり琵琶を叩き割ったり「美しいものを見せたい」と自分の裸身を晒すなどインパクトありすぎだったが、実際も強く前向きに生きる人だったに違いない。
吉野門前、向かって左側の紅葉は葉が落ちたような淋しい状態だったが、境内は拝観受付手前でも充分に素晴らしい色付き。

右上:吉野門前/右下:境内・拝観受付手前(建物名不明)→



で、次は鷹峯源光庵前バス停へ。本数は多くないので事前のダイヤ確認は必須。大徳寺塔頭へ向かうにはルート的にイマイチで、やや離れたバス停で下車ししばらく歩かなくてはならない。今回向かう塔頭は特別公開中の興臨院と、お堂の修理が終了した龍源院。山内では南東に位置するので堀川通の下鳥田町バス停から歩いたが、今宮神社裏手の紫野泉堂町で降りて山内を縦断したほうが良かったかにゃ〜(T-T)


 ●興臨院

大永年間(1520年代)能登の畠山義総が大徳寺の高僧・小渓和尚を開山として創建し、畠山家菩提寺となった。畠山家没落後、前田利家が再興し以後は前田家の菩提寺となる。
本堂・唐門・表門は室町時代の建築様式をよく表している。復元された方丈前庭は蓬莱山を表した枯山水庭園。
毎年春秋に特別公開される。

▲左:方丈前庭/中央:方丈裏庭

:同じく方丈裏庭→
写真はおかしな色合いになっちまいましたが、実際はもっと美しいです!

以前、新緑の頃に偶然拝観し方丈前庭が気に入ったので、今回再度訪れてみた。
大徳寺山内でも有数と言われる古い表門をくぐると、禅寺らしい唐門を隠すように紅葉が茂っていた。ここでは紅葉は期待していなかったのでちょっと感動。
本堂内拝観では、解説員のかたが手作りのフリップを手に詳しく解説して下さった。方丈の天井中央は鳴き龍のように微妙に丸みを帯びた響き天井になっているとか、前田利家の娘・与免姫(よのひめ)他の位牌(?)があるが利家自身は当院を訪れたことはないとか、庭園の方丈西側には葉書の語源になった木の葉・貝多羅樹が植えられている、など。 しかし菩提寺というのはいくつあっても良いものなのか?

方丈前庭は蓬莱山を表す大石と緑と砂が美しい。枯山水というと龍安寺石庭を連想し、無駄なものをそぎ落とされた厳しさや難しさを思い浮かべてしまうが、実際の禅寺の庭は須弥山や蓬莱山、それを囲む大海原や島など仏の世界を表すものも多いはず。抽象的哲学的石庭に対峙するだけでなく、ここのように視覚的に豊かな印象がある庭もあわせて鑑賞してみるとさらに興味深いのではないかと思う。

そして方丈裏へ回ると、全く意表をつかれて皆が「おお!」と声をあげてしまうほどの美しい楓が! 本数は多くないもののその鮮やかさは他の紅葉名所に全く引けを取らない。興臨院侮りがたし! 〈つづく〉


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